僕の甥っ子の妻が子宮がんで亡くなった。46歳だった。
夫はビオラ、妻はバイオリン、夫婦ともに演奏家だった。
何でもそうだが、クラッシック界でも、その道を続けるには大変な努力がいる。「夫婦というより同志でした」。何よりも大好きな音楽を最上に置いた。
がんと分かった時、「それとどう向き合うか?」を夫婦でしっかり話し合ったそうだ。子どもはいない。夫婦には、妻には、音楽しかない。演奏家というのは想像以上に酷な世界で、三日練習を休むと格段に腕が落ちるそうだ。
そこで、手術には踏み切らず、演奏や練習生活と治療とを両立させる方法を選んだ。誰にも知らせなかった。症状が悪化した時でも練習を怠らなかった。バイオリンこそが彼女の人生だったからだ。
「短いけれども、本当に充実した人生でした」と甥っ子が振り返る。
芸術家の人生とは何とも壮絶なものだね。若いのに、本物という気がする。あれもこれもと気が散って、ちゃらちゃら生きてる自分が恥ずかしくなる。思えば、郷里の実家で話した時も、静かだけれども勝ち気で真っ白な女性だった。
式場には、彼女の武器であり人生そのものだったバイオリンが飾られていた。
夫と仲間たちが葬送の四重奏を演奏した。寝棺の傍で、それがいまにも音を奏でそうな気がした。追悼!
2015年11月19日
本物の人生
posted by ヨッシー at 16:23| Comment(0)
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