2016年05月04日

芸の力

 29日、花柳一門の発表会を国立劇場に観に行った。
 日舞ワークでお世話になっている花柳錦女さんを始め、人間国宝級の踊り手・唄い手・演奏手の伝統芸を堪能した。今の日本にどれだけの伝統芸が生き残っているか。唄われる日本語はほとんど意味不明。悲しいかな、現代英語とシェークスピア語との距離以上があるのじゃないか。
 それでも『芸の力』とはすごいものだ。舞台上の5,5投身の婆様たちがほんとにお姫様やお女郎に思えてくる。技術的にも興ざめする瞬間がないから、観客として表現の奥へ奥へと分け入っていける。想像力がいや増すのだ。
 3日、グリーンスタジオの荷風忌で長浜奈津子(俳優座)さんの一人語りを堪能した。
 僕の好きな荷風の「濹東綺譚」の一節を三味線入りで語ってくれて酔わせた。地声がいい。ゆったりと聴き手の心にまで届く声だ。芸の力だ。お雪の声は僕のイメージとは違ったけれど。
 さて、7日から市民ミュージカルの稽古が始まる。
 子どもからお年寄りまでの3世代のアマチュア俳優たちとのお付き合いも15年を越える。「みんなで楽しく」をモットーに表現の喜びの原点を追求してきた。そこからさらに高い地平へと旅立って行った若者もいる。
 ここは『芸の出発点』なのだろう。面白いと気づくことからすべてが開いていくのだ。何ごとも突きつめていけば楽しさばかりでは終わらない。壁をいくつもいくつも乗り越えて、楽しさの中身がどんどん変わっていく。その地道な努力の繰り返しが芸の力となる。
 芸に何の関心もなければどうでもいい話だが、僕は今の時代こそ芸の力が大切だと思える。
 到達点の見えない長い長い芸の道…その出発点にまた新しい人たちが並ぶ日がやってくる。
posted by ヨッシー at 12:01| Comment(0) | 第8回市民M
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