2011年04月21日
市川の人は笑わない
昨夜、井上ひさし作の「日本人のへそ」を観劇しました。
「売れないだろう」と覚悟していたらしい会館側もびっくり、大ホールがほぼ満員でした。
井上さん35歳、1969年の、どもり矯正を素材に天皇批判あり権力批判ありの、まさに「日本人のへその精神」批判をテーマにした、あふれんばかりの言語攻勢の怪作です。
テンポのいい運びと役者たちの力演もあって、もっと笑いが来てもいいのにと思ったのですが、市川の人は笑わない、少なくとも大声上げては笑わない。上品なんですね。まあ大ホールという空間のせいでもあるのでしょうが、なんだか、そんな時間の過し方じゃ井上さんが泣くよと感じてしまいました。
台本はなんとも毒々しい、何かをほったらかしにして高度経済成長へと突き進む当時の社会への作者の恨みとも思える感情と猥雑さに満ちたものすごくエネルギッシュな作品です。
その毒がなかった。観客の中に爆笑とかグッと胸に突き刺さる感情とかを引き起こさなかったのは、作者の持つ毒がまるですっ飛んでいたからでしょう。もうそういったものがまともにぶつかり合わない時代になってしまったのでしょうか。そういえば、原発への怒りをまっとうに表さない今の日本人のへその精神と共通するものがあるのかもしれません。
それにパンフレットが1400円、僕なら買わないけど女房は買ってしまうのです。いい加減にしろ! いいのか、芝居がそんなに洗練されて高級なものに成り下がっても! といいたくなります。
僕も今、12月の井上ひさし顕彰市民公演「それからのブンとフン」の準備中です。間もなく出演者を募集します。市川の芝居好きの市民の手で、賑やかに猥雑にそして稚拙と裏腹のエネルギーをむき出しにして、井上作品の魅力に迫りたいと思います。芝居好きよ、集まれ!
posted by ヨッシー at 22:23| Comment(0)
| 未分類
この記事へのコメント
コメントを書く