2011年09月08日

バカをやる楽しさと難しさ

「それからのブンとフン」の稽古もいよいよたけなわ、観客を思い切り笑わせたいと毎週奮闘していますが、これがほんとに難しい。俳優たちがまだまだ本気になって「バカをやろう」という気になっていないからです。ツンとすまして普段と何一つ変わることのない表情で台詞を口にするのが演技だと思っているのかしら。
先週の抜き稽古、法人学者を演じるKさんが長い台詞を入れてきて、また工夫を考えてきて挑戦しました。この段階になると、。「ああでもない、こうでもない」と演出と役者の丁々発止の工夫と発見合戦が展開できます。普段はどこかしゃちこばった堅物を思わせるKさんが「血圧大丈夫か?」と心配になるほどの興奮ぶり、途端に稽古場が沸騰します。
「舞台ではすべてが許される」といわれても、裸にもなれないし自分の恥部までをさらけ出すなんてできないのが人間、何十年も生きて築いてきた自分の殻は壊せそうもありません。容貌に自信のない人は人前に醜さを出すことを拒否して表情を変えません。内面にコンプレックスを秘めた人は心を躍動させてすべてをさらすことを拒否してしまいます。人間は何重にも武装して日常を生きている動物だからです。
では、何故役者をやりたいのか? その根本が問われてきます。
日常生活では決して省みようとしない自分の中のさまざまな感情、表情、欲望、意識・・・こうしたものに真正面から向き合って新しい自分の本姓を確かめることができることを成長というのではないでしょうか。
舞台に立つ役者だけがその実験を許されるのです。今回のような爆笑劇では、恥部をさらすという被虐的な体験こそが達成感を増幅させるのです。
観客は芝居の上手下手を見たいわけじゃありません。自分を変えてくれるような感動を期待しているのです。そういう感動を産み出すために、役者たるもの、自分のすべてをさらして、特に喜劇では自分をトコトンおとしめてでもお客様に笑っていただく覚悟とエネルギーが必要です。そして最後に「俺もさすがだなあ!」と自己満足すればいいのです。
これからそういう稽古をめざします。
posted by ヨッシー at 19:30| Comment(2) | 井上ひさし顕彰市民公演
この記事へのコメント
Posted by 紀子 at 2011年09月11日 11:49
納得です。同感です。
熱い熱い稽古の様子が伝わってきます。人を笑いで感動させるって難しいですよね。敢えてそこに挑戦されているところが素晴らしいです。
さらにさらに舞台が楽しみになりました。皆さまがどれだけばかになりきってくださるのか…(笑)

気がつくと、家庭でも、職場でも、眉間に皺を寄せている毎日。
たくさんたくさん笑わせてください。

残暑厳しい折、ミュージカルに携わる皆さまがご健勝で、益々お稽古に励まれますように…。

今後も、折に触れ稽古風景を更新してください。パワーと勇気をいただける気がしますので…。



Posted by 紀子 at 2011年09月11日 12:19
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